物語の作り方について

 コマ撮りアニメを作りたい。NHKで昔放送していたデジスタを見てからコマ撮りアニメを撮りたいと考えていた。当時、音無しのGIFアニメは作ってみたが、本格的なアニメを作るにはランチボックスと呼ばれる画像編集機械またはコンピューターと画像編集ソフト、人形の骨格などをそろえる必要があって、子供にはお金がかかりすぎると知った。

 現実では動かない物が画面の中でならば動かせること、また、そうするための作業が面白そうだというのが動機だと思う。だから、伝えたいメッセージがあって、それを伝える手段としてアニメーションを作りたいという、一般的に好ましい(?)動機ではない。よって、伝えたいメッセージは無かった。(実はすでに自分の中にあったかもしれないが、まだ発見していなかった。)

 作るからには単に物体が動いている無味乾燥な映像を作るよりは、物語を作りたいと思った。本屋さんのシナリオ創作法教授本の棚で立ち読みしてみたが、やはり伝えたいメッセージが先に無ければ、どうやってもうまくいかないかもしれないという考えからそれらの方法論の本は買わなかった。

 「何か伝えたいメッセージは無いかな。」などと考えて過ごしていたが、相当シンプルなメッセージでないとコマ撮りアニメでは表現できないかもしれないと思って、余計難しいなと感じていた。そんな時、Twitterのタイムラインでショートショート連作創作ワークショップというのを見つけた。いつも面白いイベントをやっている荻窪のブックカフェ六次元で催されるワークショップだった。当時(2016年4月頃)は知らない人に出会ったり、新しいことを始めたい気分の頃だったので、早速申し込んだ。

 そのワークショップでは、作家である講師がショートショートを作る際の「ナンセンスな形容詞付きの名詞」を発想する方法を教わった。明和電機のおかしな発想法にも似ていた。何か物語を作るときはそんな「ナンセンスな形容詞付きの名詞」から話をふくらませ、やがて自分の伝えたいメッセージをのせて、ブラッシュアップし仕上げるのかもしれないなと思った。

 ゴールデンウィークには、静岡で行われるふじのくに⇆せかい演劇祭に観劇しにいくのがここ数年の習慣だ。そこで、アルツハイマーの老人の記憶が失われていく悲しいお話の劇を見た。てっきり、「アルツハイマーの老人の記憶が失われていくことは寂しい。」というメッセージを伝えるために、作った作品なのだと思っていたが、違った。終幕後に催された脚本家でもある出演者のインタビューで、劇中に登場する「動物のように動くテント」という存在感はあったが、メッセージとは直接関係しない、いわば馬など他の動物でも良さそうなものを初めに思いついて、その後に、アルツハイマーの老人の話にしようと決まったようなのだ。この発想過程は、前述の好ましい創作の動機とはまるで違う。こういう作り方でも、いいんだということを知って、大いに励まされた。僕の動機も不純じゃないかもしれないので、やってみようと思った。

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「物語の作り方について」への1件の返信

  1. 面白いものを撮りたいなら、最初は貴方の好きなモノのオマージュの積み重ねでも良いかも知れません。
    為になるものを撮りたいのなら、先ずは漢詩や諺をおさらいして、気に入ったものから膨らませると良いかも知れません。

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